発起人片貝文子のインタビュー

過疎化が進むなかで地域の交流を増やしたい

この地域は、過疎化がどんどん進んでいます。この場所に永住するのは少し難しい話かもしれないけれど、たくさんの方が来てくれることによって、私たちが交流できる方たちが増えたことは、とてもありがたいことです。興味を持って、わざわざ足を運んでくれるというのは、私たちにとってはすごく嬉しいことだし、大歓迎!


こんな何もないところに、若い人たちや外国の方々が来てくださって、盛り上げてくれていることが嬉しくて仕方がないの。本当に感謝しています。

ここにくれば、みんな友だちです。煩わしい人間関係なんてありません。外国の方とだって、ジェスチャーと単語でなんとかしているんですから。それでも、少しすればみんなお友だちになっちゃう。

そうしてせっかく来てくださったみなさんの、少しの癒しになれば良いなと思って、お手伝いをさせてもらっています。都会の通勤ラッシュやせわしない毎日に少し疲れてしまった方、ぜひいらしてください。

たくさんの優しい自然と暖かいMAYUDAMA HOUSEが、あなたのことを癒してくれるはずです。きっとリフレッシュできると思いますよ。
(ライター:藤田真奈 撮影:中村涼磨)

発起人長尾孟大のインタビュー

忘れかけている感覚を再発見できる場所にしたい

MAYUDAMA HOUSEが掲げているコンセプトが『人と自然の共生』です。やっぱり僕もそうなのですが、 東京のような都会で生活していると、家からちょっと歩けばコンビニがあって、なんでも手に入れることができますよね。 お金さえ払えば、なんでもひとりでできるという感覚になってしまいがちです。

でも僕たちのこの便利な生活は、実は、その裏にたくさんの人たちの様々な支えがあってこそ成り立っているものです。 普段食べているご飯も、コンビニのお弁当でも、お金を払うだけで勝手にできるものではありません。 そういった、東京のコンクリートジャングルで生きていれば、ふと忘れてしまいそうな感覚を再発見してもらいたいという思いで、MAYUDAMA HOUSEを運営しています。

MAYUDAMA HOUSEには、足を運んでくださった方に「再発見」をしていただけるきっかけがたくさんあると確信しています。 宿泊や体験を通じて、「自然に生かされている」ということに気づくことができる場所です。

ここでの生活を通して感じてもらいたい感謝の気持ち

この場所で体験してもらいたいと思っているのは「衣食住の全てが自然に由来している」ということです。 ここに流れる空気やここでの生活を少しでも味わっていただきたいと思っています。そのためのコンテンツとして、 山菜採りや地粉を使ったうどん作り、草木染めの体験などがあります

他にも、泊まることで感じられる部分もあるんです。例えば、MAYUDAMA HOUSEの中の大きなむき出しの木の柱。 自然の中でもこんなに大きな木はなかなか生えていません。そんな、自然をフル活用したこの家で時間を過ごしていると、 ただ自然の良さを感じるだけでなく、きっと感謝の気持ちが湧いてくるはずです。

便利で合理性のある都会の暮らしの裏の、田舎の人たちの支え。あまりにも距離が離れすぎていて、 普段の生活で感謝しろと言っても無理な話です。でもここに来て実際に体験することで、イメージできるようになります。 楽しくて気軽に、考えることができるようになるんです。そんな小さく湧いてくる感謝の気持ちを大切にしてもらいたいと思っています。

来る人も迎える人もみんな楽しい、そんな場所を提供したい

そんな僕自身が大切にしていて、感謝しているのが、地元の方々の支えです。MAYUDAMA HOUSEがまだ人が住める状態じゃなかった頃から携わってくださっている方への感謝の気持ちは消えたことがありません。そして何よりも嬉しいのが、携わってくれている地元の方々が楽しんでくれていることです。

若い人や外国の方たちが足を運んでくれることによって、地元の方々の交流が増えたり、今まで何もやることがなかったおばあちゃんが、日々の楽しみを見出してくれたり。体験アクティビティもそうです。今まで特技を披露する場所がなかった方が、来てくれた人と一緒になって楽しんでくれています。来てくれる人も、この地域にいる人もみんな楽しい。そんな素敵な空間の中心がMAYUDAMA HOUSEであってほしいし、そんな場所を今後も提供し続けていきたいと思っています。

それが、これまで僕を支えてくださったこの地域にできる最大の恩返しだと信じています。
(ライター:藤田真奈 撮影:中村涼磨)

〜MAYUDAMA HOUSEができるまで〜

忘れかけている感覚を再発見できる場所にしたい

ちょっとうちの地元にきてみないか
最初のきっかけはそんな言葉だったように思う。
都内の大学に通う自分たちは、その地元というのが群馬県にあり、太平洋より日本海の方が近いという事もよく知らず、自分たちはこう答えた。
「はい!行きます!」

人口1万3000人の小さな町、東吾妻。この町との出会いが、 まさかこんなに自分たちの人生に影響を与えるなんて当時は思ってもみなかった。




最初にこの町を訪れてから三ヶ月ぐらいが経ち、
いろんな企画を立てるも資金が集まらない日々が続いた。
その時、『ここなら少ない資金でもできるかもしれない』『今ボロボロで誰も使ってないんだけど、きっと君達が気にいる古民家がある』
そう案内を受け、半信半疑で観に行く事に。床はボロボロ、壁は薄い板一枚が立てかけてあるだけで、屋根の上は落ち葉が腐葉土となり屋根から木が生えている そんな場所だった。 それでも、一目見た時、この古民家に魅了されていた。 ここを直す、といった時周りの地元の人からさえ、お決まりの反応は
『冗談でしょう』だった。




企画倒れが続く中でこの地に通う中で僕らは この場や地域のもつ雰囲気。 そしてこの地の生活には自分たちの 普段の生活にはない「なにか」があったのだ。 ゆっくりと流れる時間。たくさんの人に知ってもらいたい。 面白いことが出来るかもと軽い気持ちで始めた僕らにはそんな想いが芽生えていた。


こうしてMAYUDAMA HOUSEプロジェクトは始まったのだ。 しかし、いざ始めると決めたはいいものの、先立つ物が何もない。 信用も実力もなく、暑苦しい意気込みだけが武器であった自分たちが 資金を得るために行った事は、クラウドファンディングだった。 資料を作り、方々にお邪魔しては説明してまわる。 そんな地道な行動の積み重ねが実り、クラウドファンディングは成功。
本格的にこのプロジェクトが始動した瞬間だった。

しかし、それは過酷な一年間の始まりでもあった。 クラウドファンディングには成功したが、それ以外でも集めようとしていた資金は集めきれず、当初の予定よりも少ないお金しか残らなかった。 当初修理に関しては、外注をメインに自分たちも修復をしようと考えていたが、外注出来る程のお金はなかった。 でも、クラウドファンディングで直すと約束はしてしまった。

僕達に出来ることはただ一つ、自分たちが手作業で直して人件費を浮かすことだった。
そしてそこから平日は東京で大学に通いながら、バイトをして、プロジェクトに係る仕事をおこない、土日は朝5時に家を出て、 4時間半電車にのり、着いたら朝から夜中まで力仕事をおこなう。そんな日々がスタートしたのだった。

そして始めてから気が付いたのだが、なぜ直そうと思ったのかわからいぐらい汚い状態だった古民家はゴミ捨てからはじまった。 友達に手伝ってもらいながら出てきたゴミは軽トラ数十台分はあっただろう。


その後ゴミ出しがおわったあとは、地元の人達にノコギリや電動工具の使い方を教わりながら、 東京と群馬を往復しながら、家を直す日々がつづいた。

そして少しずつではあるが、床貼りや、壁づくり、窓の設置、屋根の修理などおわるにつれて、廃屋は家に変わっていった。

その間には本当に数えきれない地元の方や支援者、仲間の支えがあった。 疲れ果てるなか、色んな事が中途半端であったり、連絡が抜けていたりと数々の迷惑をかけていたとおもう。

それでも何も言わず支えてくださった方々の存在がなければ今のMAYUDAMAHOUSEはできていなかった。

予想以上に肉体的にも精神的でもハードだった改修作業を続けられたのは「支えてくださった方への恩返しをしなければ」 これが僕らに唯一残されたモチベーションだった。


そして、2016年4月廃屋だった古民家はMAYUDAMAHOUSEとして無事完成した。 このときは、いまとは違いリモートワークのシェアオフィスとしてのオープンだった。 その後シェアオフィスしては、有名な地方のシェアオフィスを回ったが、実際は利用者はほとんどおらず視察者のほうが利用者より多い現実、 そしてシェアオフィスとしてはアクセスが悪いということを踏まえ、一年でオフィスでの利用には諦め現在の姿へと生まれ変わっていった。


ただ、オフィスであっても、いまの体験型宿泊施設であっても伝えたいは変わらない。

ここを訪れた人が、普段の合理性や効率を追求した生活では忘れてしまった 地域の繋がりやそこから生まれる人の温かさを感じ取って欲しい。 そして東吾妻を大好きになって帰ってきてもらいたい。



そして、MAYUDAMAHOUSEでアクティビティを提供する人、お掃除をする人、地元の人、お客様だけでなく係る人が少しでもハッピーになれるキッカケをつくれる場にしたい。 今はそんな考えでこの場所を運営している。


ここ、MAUDAMAHOUSEはそんな若者たちの想いが詰まった場所です。

© MAYUDAMA HOUSE